卒FITまでの10年を振り返る

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2011年に太陽光パネルを設置して10年経過して卒FITを迎えたので、その振り返りをしておきます。

10年の総発電量は33,705kWh、一般家庭の約6.7年分(5,000kWh/年として)の電力を発電しました。自給率は417%だったので、自家消費の4倍の電力を地域に供給したことになります。
売電は42円での契約で、10年で1,274,550円売電しました。これは、助成金を差し引いたシステム価格1,411,000円の約9割に相当し、9割方元が取れたことになりますが、電力モニターによる節電効果を考えれば、投資額以上の経済効果があったと言えると思います(お金の話ですみません...)。
また、今後も安いながらも売電し続けて家計の足しになってくれます(須賀川ガスに10円で売電)。一方で太陽光パネルは長寿命と言われているものの、パワーコンディショナーは寿命10年~15年くらいとも言われているので、交換費用は見込んでおく必要がありそうです。

元々、豪雪地帯でも太陽光発電できることを実証したくて設置したので、その意味では10年間特に支障く運用できたことは大きな収穫でした。

以下、振り返りです。
・電力モニターで消費電力が見える化できたので大いに節電が進んだ
・気温が低い方が発電効率は高いので、寒冷地でも十分な発電が期待できる
・一方、積雪があると発電しないので、都度雪下ろしが必要で、大きな負担になる(自分は楽しんでやっていましたが)し、積雪対応の太陽光パネルが必要で割高になる
・雪下ろし不要とする場合の選択肢として、急傾斜の屋根に設置(そういう屋根は少ない)、壁面設置(発電効率が悪い、面積が取りづらい)、架台を立てて設置(暴風時の破損が心配)、融雪機能付き(電力消費増加)などが考えられるが、どれも一長一短ある


そして卒FITを間近に控えた去年、差し迫った気候危機の対策の一環として再エネを増やしたいこと、EV車のリーフを100%太陽のエネルギーで走らせたいこと(母屋の太陽電池では充電時の8割程度しか賄えない)、ほぼ投資額が回収できたことから、こびっとハウスにも太陽光パネルを載せました(4.6kW)。kW当たり単価でくらべると、587,302円(母屋)→310,913円(こびっとハウス)と10年で約半分に下がりました(2021年の相場は22万円/kW~33万円/kW、平均26~27万円/kWのようです)。売電も42円→21円とこちらも半分に(2021年度:19円、2022年度:17円)。10年で半値の日本は再エネの価格低下が諸外国より遅れていると言われているのですから、諸外国の再エネの価格低下がいかに凄まじいか(1/5とも)実感します。

化石燃料に頼らない移動手段が確保できたことが何よりうれしく、ドライブも心地よいものになりました。冬は商用電力頼みになってしまいますけどね(一応、こちらも非化石証書を組み合わせたサービスを利用しているで、再エネ100%ではあるのですが)

 

開拓地のおばあちゃんたちの持続可能な暮らし

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私の住む福島県裏磐梯1888年磐梯山の噴火後に、植林活動や自然の回復力により、300以上の湖沼群からなる自然豊かな美しい景観が形成され、1950年に国立公園に指定された土地です。同時に、噴火により荒れ果てた土地を入植した人々が苦労に苦労を重ねて開拓した土地でもあります。そうした開拓者精神を受け継ぐ地元の人たちの暮らしぶりには経済成長に頼らない生き方として参考になる部分がたくさんあります。

 

自活力の高さ

地元のおばあちゃんたちはとにかくたくさん野菜をつくります。たまに訪れると有り余るほどの野菜をいただきます。パーマカルチャーでいうところの「余剰物の分配」。自分だけでなく周囲の人たちをも豊かにしてくれます。季節になると散歩ついでに山菜を採るのが楽しみです。散歩帰りには両手に袋いっぱいの山菜を持っています。それらの一部は塩漬けされて冬の野菜が採れない時期の食料となります。

 

地域のつながり

おばあちゃんたちは免許証を持たない人も多く、日常の移動は徒歩か自転車です。余計な物は買わず、旅行にも行かず、ご近所さんとの「お茶っこ」が日課。コミュニケーションが密で困ったことがあればいつでも助け合える間柄です。地域外の人と会う機会が少ないので感染症の心配もほとんどありません。「お茶っこ」のお供には、手作りのお菓子や漬物、煮物などがほとんど。手作りのおかきやカリントウ、ポテトチップスなど、市販のものよりずっと美味しかったりします。

 

自然界への感謝

自然からたくさんの恵みをいただいて暮らしているからなのでしょうか、おばあちゃんたちの態度の端々から山々を敬う気持ちが感じられます。また、この地域では五穀豊穣を感謝する「秋祭り」、無病息災を願う「歳の神」の行事が集落ごとに行われ、神様への祈りを捧げます。また、近隣集落では「熊祭り」が行われ、ツキノワグマへの感謝が捧げられます。

 

まとめ

国立公園という大規模開発から守られ、生物多様性を維持する努力が続けられてきた自然豊かなこの土地での自然の恵みに感謝しながらの暮らしは、環境への負荷も少なく、ある意味最先端の暮らしという側面もあるように思います。コロナ禍にあって多くの人が都会から地方や農村、山間地などに移り住み、おばあちゃんの暮しぶりに学び、ライフスタイルを変えていくことで、社会全体の環境負荷もまた大きく低減されるのかも知れません。

 

Photo by Anju Nakamori All rights reserved.

エネルギー基本計画見直しの議論について

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1.エネルギー基本計画とは?

日本において、国民の多くが反対しているにも関わらず原子力発電所(以降原発)が再稼働され、年々気候変動の自然災害が拡大しているのに、石炭火力発電所が大量に新設され、再生可能エネルギー(以降再エネ)の普及が頭打ちになっている理由をご存じでしょうか? その大きな要因の一つがどのエネルギーをどれくらいの割合とするかを定めた「エネルギー基本計画」です。 

この計画では、2030年に再エネ22~24%、原発20~22%、石炭火力26%(いわゆるエネルギーミックス)を目指しているために上述のような状況になっており、再エネの拡大、原発ゼロ、石炭火力の早期全廃の実現には、この計画値の抜本的に見直しが必須です。 

また、日本の温室効果ガスの削減目標は2030年26%削減と、野心的な目標を掲げる国々に比べ極めて低い目標であり、国内外から大きな批判の的になっていますが、この目標値はエネルギーミックスを元に定められているため、エネルギー基本計画が削減目標見直しの大きな足かせとなっています。 

このエネルギー基本計画は、少なくとも3年ごとに見直しすることになっており、その議論が2020年10月より始まっています。

www.enecho.meti.go.jp

 

 2.見直し議論の課題

2020年10月26日に菅義偉首相が2050年までに脱炭素社会の実現を目指すことを表明したことで、脱炭素への移行を表明する企業が相次ぐなど、脱炭素を巡る産業界の状況は一変し、本分科会でも脱炭素社会の実現が主題となったことは歓迎すべきことと考えます。

 一方で、これまでも脱炭素社会への移行の必要性を訴えてきた環境NPOや専門家からは見直し議論の問題点も指摘されており、そのいくつかを紹介します。

 

(1)1.5℃目標を目指していない

なぜ2050年の脱炭素社会の実現が必要なのかの議論が見受けられません。地球の平均気温を産業革命以降1.5℃以下に抑えることがその目的ですが(1.5℃目標)、そのためには2030年に温室効果ガスの排出量を半減する必要があるということが国際社会で広く受け入れられています。本分科会ではパリ協定の1.5℃は努力目標という過去の状況が前提の議論となっているようで、あと10年で社会システム自体を大きく変革する必要があるとの視点、議論も今のところ見受けられません。これでは、1.5℃目標の達成に貢献できないだけでなく、取引先に再エネ100%を求めるグローバルな企業活動から日本企業が締め出されたり、輸出品に関税がかけられてしまうことも懸念されます。次回から2030年の議論が始まるので、内容を注視していきたいと思います。

 

(2)将来のイノベーションに依存

今回の議論では、火力発電で排出されるCO2を回収し、貯蔵したり、利用する技術(カーボンリサイクル)や水素、アンモニアが燃料の火力発電(ゼロエミッション火力)など、将来のイノベーションが大前提になっています。しかし、これらのイノベーションには経済合理性や技術的障壁、調達先の確保など今後解決しなければならない様々な課題を抱えており、実現性が不透明と言わざるを得ません。

 一方、欧州などでは風力発電太陽光発電などの天候に左右される電源(変動性再エネ)を大量導入するためのシステム改革や技術革新(セクターカップリング、電力システム改革など)について活発に議論され、取り組みも進んでいます。本分科会でも再エネを最大限導入するとしながらも、欧州に見られる変動性再エネ導入の議論が見受けられません。

 また、既存技術をいかに普及、拡大させるか、グリーンな経済へ移行に伴って生じる雇用の移動を円滑に行うための議論(公平な移行)も置き去りにされており、足元をしっかり固めた国民が安心して暮らせる社会にするための議論が望まれるところです。

 

(3)議論の体制

この日本の将来を左右する大切な議論を担うのは産業界や大学、研究機関から選ばれた24名の委員の方々ですが、脱炭素社会を担う柱であり政府が最大限導入を目指すべき再エネの専門家がほとんどいない、気候変動対策が不十分であればより多くの被害を受けることになる若い世代は委員におらず、60代、70代の委員が7割近くを占めるなど、委員の構成が偏っているとの指摘もあります。また、多くの委員が脱炭素社会の実現には原子力発電所の新設や更新が欠かせないと発言するなど、世論との意識に大きな乖離がある論点もあります。そもそも、すべての人々の将来に関わる重大なこの議論が一省庁と産業界寄りの委員のよって大きく方向づけられてしまうこの現状は大きな課題と言えるでしょう。

 

 3.私たちにできること

 1月27日よりエネ庁が国民の意見を受け付ける「意見箱」を設置しましたので、より多くの声を国政に届けて、あと4年が以下に重要であるかを認識していただきましょう。

www.enecho.meti.go.jp

 

また、日本でも自分たちの将来を憂う若者たちが声を上げ、素晴らしいキャンペーンを展開しています。署名も受け付けていますので、ぜひご協力をお願いします。 

ato4nen.com

 
Photo by websubs.

2020年のエネルギー収支

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2020年のエネルギー収支

去年10月、政府が2050年カーボンニュートラルを宣言し、にわかに脱炭素化に向けた動きが活発になってきた感がありますが、1.5℃目標を達成するには甚だ心許ない状況な訳で、まだまだ頑張らないといけないと思う今日この頃ですが、今年も恒例の我が家のエネルギー収支(光熱費収支)を振り返ります。今回はリーフへの切り替え2年目で前年と同じような傾向でした。

  • ガソリン代減(14,966円 ⇒ 9,086円:軽トラ分)
  • 電気代増(15,925円 ⇒ 18,270円:リーフへの充電)
  • 売電代減(128,310円 ⇒ 114,072円:リーフへの充電と日照不足で発電量自体減)

光熱費は年間66,574円、売電との差し引きで47,498円の黒字となりました。

10年間続いた42円の売電も今年で終了、いよいよ卒FITです。昼間リーフに充電した電気を夜間家で使うための Leaf to home というシステムを導入するという選択肢もありますが、バッテリーの劣化が少し心配なのと、電力消費自体が少ないので、あまり意味がないような気も...

それより、リーフへの充電で買電が増えているのを何とかしたい(母屋の太陽光パネルの枚数では充電を賄いきれない)のと、裏磐梯の屋根載せ太陽光発電をもっと増やしてCO2を削減したいということで、こびっとハウスに太陽光パネルを載せることになりました。詳細やリーフを使っての感想など、後日このブログにアップしよう思います。

 


 

SDGs 気候変動に具体的な対策を〜森と自然エネルギー〜

 

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去年の裏磐梯エコツーリズム協会主催の森林講座に続いて、今年も裏磐梯サイトステーションにて、講座を担当させていただきました。

今回は、SDGsを学ばれている会津地域のガールスカウトのみなさんを対象に、気候変動と森の循環のお話をさせていただきました。

SDGsの視点からも、再エネ拡大と森林保全は両立する必要があること、気候変動を根本原因から解決するには循環型社会に転換する必要があり、そのお手本として私たちは自然や森から多くのことを学べるはずであること、コロナ禍や気候変動はそうした方向に社会を大きく転換するチャンスであること、などを小学3年生にも伝わるようになるべく体験や双方向のやり取りを心がけました。が、ちょっと難しかったみたいです(汗)。

 

当日はFMきたかたの方が取材にいらして、後日、講座の様子を放送してくださいました(5分番組×4回)。分かりやすくコンパクトに編集いただいたので、許可を得て録音した音声を公開します(9分ほど)。外で刈り払い機が複数稼働してたのでノイズがあります。(Dropboxのアカウントがなくても聴けます)

www.dropbox.com

目指せ、2030年CO2排出ゼロ

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恒例の年初の我が家のエネルギー収支(光熱費収支)です。2019年は、いよいよ気候変動の脅威が差し迫った現実として立ち現れてきたこと、消費税増税、今後の日本経済の冷え込み予測などを鑑み、リーフへの切り替え、家の断熱(全面二重サッシ化)と思い切って大型出費を行いました。

4月頃からEV車に切り替えたことで、ガソリン代は大きく削減する一方、電気代は増加(11,146円⇒15,925円)、売電代は減少(131,166円⇒128,310円)しました。ちなみに、中古リーフ購入時のキャンペーンで4年間は急速充電無料(それ以降は30,000円/年かかります)。ということで、光熱費は年間76,137円、売電との差し引きで52,173円の黒字となりました。

 

交通部門のCO2の排出量を下げる道筋がついたので、今後は熱部門(灯油給湯、ガス調理)を何とかしたいところ。去年、Earth Spiral として、個人として、気候非常事態を宣言しまして、「2030年までに敷地内から発生するCO2をゼロにする」ことを目標に掲げたいと考えています。来年6月には卒FITを迎えることもあり、余剰電力をいかに活用するかが課題となってくるのでその点を考えていきたいところです。

 

ヨーロッパではお天気任せの風力、太陽光発電を基幹エネルギーとするための法整備が着々と進んでいるそうで、天気により過剰に供給される電力をいかに平滑化するかを考えたとき、電力部門だけでなく交通部門(EV車など)や熱部門(ピートポンプなど)に分散させていく方向性なのだそう(セクターカップリングというらしい。詳細は末尾の動画をご覧ください)。そうした再エネ100%の社会の方向性に沿って行くという意味では、我が家も熱部門ではエコキュートを導入して脱炭素化を図る方向性もありなのかな、と考えている今日この頃です。

 

(参考)

 

 

クライメイト・リアリティーのトレーニングに参加しました(その2)

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レーニング二日目。前日得た知識を踏まえ、これからクライメイトリアリティーのリーダーとして行動に移していくために、仲間同士がつながり、自分の行動計画を立案し、今後の行動を自分に誓う時間。

といっても、疲れも溜まって集中力も途切れがち。それでも、会場の熱気と美味しいビーガン料理のおかげで体調も良くなったみたい。二日目は、具体的に気候変動に立ち向かっている際立った事例がいくつも紹介されて励まされた気分。こうしたトップランナーの動きを(一日目の学びによれば)体験し、それを広げていくことが大切なのでしょうね。

一日目の引き続き、覚え書き(しかもだんだん雑なメモに)です。

東京都の取り組み(小池知事)

  • 21世紀は大都市の時代。U20(Urban 20)で他都市と連携し、廃棄物や大気汚染、水の問題に取り組んでいる
  • キャップ&トレード(CO2排出量取引制度)の導入により、2000年に排出量がピークアウトし、2017年には23%削減を実現している
  • 都のGDPは増加傾向にあり、排出量とのデカップリング(経済成長とエネルギー消費の切り離し)に成功している
  • RE100の理念に基づき、今年の8月から都庁舎を再エネ100%の電力に切り替えている
  • ZEV(ゼロエミッションビークル:電気自動車、プラグインハイブリッド自動車燃料電池自動車)を2025年までに2倍にし、2030年までに5割を目指す。購入時に30万円を助成する。2030年までに急速充電設備を1000基
  • プラスティックごみの削減では、2030年までに焼却を4割削減し、総量を70万トンから40万トンに削減する
  • 適応策について、Tokyo Green Bonds が3年目を迎え、200億円となっている

変化をもたらす企業

  • 国内の危機感が希薄であり、世界の潮流に遅れている
  • 世界の潮流は、talk → walk → action → possitive impact up → negative impact down であり、いかに再エネを増やすか、いかに化石燃料を減らすかに焦点が移ってきている
  • 気候変動対策は、ネットゼロに向かう競争であり、ビジネスが起こした問題なのだから、ビジネスが解決するのだという意識が大切。金融が鍵となっている
  • ソニー:金融の動きがきっかけで、トップの意思により環境活動が活発になっている。ダイアログを重視している
  • パタゴニア:従業員の生活への配慮が大切。若い人が働きたい会社が良い人材を確保できる時代。顧客は消費者ではなく、社会を変えるパートナー
  • GPIF(日本の年金の積立金を運用管理する世界最大の機関投資家):年金の運用は100年持続可能であるべきで、長期的視点が重要だが今の金融界にはその視点が欠けている
  • 気候変動リスクは長期的に重要であり、そのコンセプトを訴え、アウェアネスを高める必要がある
  • 石炭への投資家には変化を促している。TCFDが推奨するシナリオ分析によりアウェアネスを高めてもらう。ムーブメントになりつつある。
  • JPモルガン:環境金融は長らくマイナーなものだったが、ESG投資の急拡大により180度の変化が起きている。
  • 気候行動サミット前日の国連会議では、パリ協定やSDGsと整合する金融について議論した

    まとめ
  • 個人が個人としてモノを言えない企業文化を打破しよう
  • 企業は気候変動イニシアティブへの参加を!
  • 「温暖化との戦いに負けるな!」「世界は目覚め始めている。あなたが好むか好まないかにかかわらず」 

会場からの質問への回答

Q) 懐疑派対策はどうすれば?
A) 国内でも多くの人は主流の考えを支持している。反原発の人たちの中には、原発推進の人たちが温暖化を利用したことから、温暖化に懐疑的な立場をとる人もいる。そこにあまり時間を取られるより、必要なことに集中した方が良いのかも。

Q) 高度経済成長期を牽引してきて、今は自分たちが気候変動の問題から取り残されていると感じている人たちを取り残さないためには?
A) 経済を発展させてくれたことへの感謝の念を忘れずに。彼らのせいではないのだから。再エネへの移行を共に。公平に移行しよう。
石炭、石油産業が電力販売に転換するなど、自由な市場が大切

Q) 原発の役割は?
A) 江守氏:運転時にはCO2を排出しないし、排熱も温暖化には寄与しないと考えるが、事故リスク、廃棄物、核拡散、作業員の人権などの問題をかかえており、しっかり議論する必要がある。100%再エネは可能と考える。小型原発の可能性は否定しない
ゴア氏:父は原発推進派で、自分も議員としてサポートしてきたが今は大きく失望している。それは莫大なコスト。建設費の増大、住民の反対、廃棄物の地下貯蔵。第三世代の原発はより高コストで、誰もそのコストも建設期間も答えられない。第四世代は小型で安価ではあるがそもそも存在していない。専門家によれば15年以内に成功するかは分からない

Q) 嫌われないように伝えるには?
A) 個人の選択の問題であり、変化は政策や法律、補助金の出し先などに求めよう
関心のない人にはREDD+の例のように途上国の参加を促す(温暖化対策が経済的にもメリットになる仕組みの提供ということ?)
若い人たちが声を上げることのインパクトは大きい。
日本文化では他の人と違うことがしづらい。自信ある幸せそうな笑顔がリーダーシップになることも。
LGBT同様に何が正義なのかは時代と共に変化する

Q) 日本では誰を説得すべき?
A) 私たちは選挙で誰を選ぶのか? 気候セキュリティーの議論が少なすぎる。社会不安や家を失う人などの社会的側面について、日本の研究者も及び腰になっている。
消費や投資で選択し、選挙の争点となるように、政界や財界により強いプレッシャーを。
Fridays for Futureが東京都へ気候非常事態宣言の請願書を出したように。

Q) 脱炭素はどうしたら?
A) 永久の経済成長はできない。4つの政策が大切(非エネルギー、脱炭素、エネルギー削減など)。シェアリング・エコノミーなら生産や排出量を減らせるし、人同士がつながれる。SDGsはつながりを見つけることでもある
消費を刺激し、必要以上の消費を喚起するような資本主義の側面は見直す時期に来ている。消費イコール幸せではないのに、値の付かないモノの価値を測れないGDPという歪んだ指標を使っているので、見る目が歪んでいる。本当に大切なものを図るべき。GDPには、汚染などのネガティブな外因性、メンタルヘルスなどポジティブな外因性、天然資源の枯渇、富の偏在などは含まれていない。

イケアジャパンの取り組み

  • 2025年に電力の再エネ100%、2030年に熱分野の再エネ100%を目指している
  • 地球の限界内で行動する。パリ協定や貧困対策を重視し、顧客や従業員の満足を大切にする
  • 物流センターなどはBREEAM認証(イギリス建築研究所建築物性能評価制度)を取得しビジネスメリットにもなっている
  • 2025年に100%ゼロエミEV化、無料の充電設備を配備
  • もったいない精神で大量消費から循環への転換を目指し、2030年までにすべての製品をリサイクル可能としバージンマテリアルの使用を抑える。プラスチックも全廃する。中古家具のリメイクをビジネスにする。テーブルウェアはトウモロコシを原料とし、食料も美味しいベジでフットプリントを1/7に減らす
  • 意図が言葉に力を与える。行動は家庭から。気がつけば知らないうちにあなたも環境保護レンジャー

コミュニティー・オーガナイジング

  • 気候問題は人を怖がらせもするが、「変えよう!」という気持ちになってもらうこともできる。聴き手との信頼関係づくりのスキルを学びました
  • 人々が共通の目標を達成できるためのリーダーシップ
  • 「ストーリーづくり」、「関係性づくり」、「チームづくり」、「戦略づくり」そして「行動」の5段階で考える
  • 戦略と同時に心で納得してもらうこと、ナラティブが大切
  • 「今のストーリー」:緊急性の理由、「私のストーリー」:自分が何故関わるのか、「私たちのストーリー」:その場の想い、共に経験したもの、を伝える
  • 感情を経験しないと人は動かない。私のストーリー、想いのきっかけ、痛みと希望、何が大切かの再認識
  • ワーク:「気候問題に取り組むあなたを突き動かす原動力」の自分のストーリーを3分で語り、聴き手からフィードバックをもらう

プレゼンテーションをマスターする

  • 数々のプレゼンを重ねてきた先輩からゴア氏のプレゼン資料の活用方法、プレゼンのコツなどを伝授いただきました

次のステップ

  • クライメイト・リアリティーのリーダーとして、クライメイト・リアリティーのネットワークとつながってこれからどんな活動ができるのかのご説明。
  • 毎年行われている"24 Hours of Reality"、今年は11/20-21に開催予定。このタイミングで周囲にプレゼンする機会をつくりましょう。
    (※ ウェブで24時間中継があるので、ぜひ見ましょう。去年の日本のパートはこのトレーニングでも司会された小松氏がナビゲート役で、環境への取り組みに熱心なローラさんも頑張ってました。)

ネットワーキング・分科会セッション

  • 企業やNGO、学生など5つの分科会に分かれてネットワーキングしました

気候行動のためのチェンジエージェント

  • 日本の平均のゴミのリサイクル率は20%だが、上勝町は80%。そもそもゴミがでないように努力している。
  • 秘訣を聞かれるが魔法の杖はない。30年の積み重ねと戦略性の結果。1:8:1または2:6:2を理解する。推進と反対の両極のいるのはわずかな人で、中間の多数派はより意識の高い方、より良いシステムの方、他の人がやっている方に流れる。
  • プラごみを減らすコツ:お店でストローを断る時に、「ストロー要りません」とはっきり伝える。これを何人もがやると店員は断られるという嫌な体験を嫌って「ストロー要りますか?」と聞くようになる。それで当たり前と思っていた人にも意識の変化が生まれる。友達と一緒の時にも目の前ではっきり断ると友達にも広がるかも。
  • グレタさんのスピーチの本質は「普遍性」。だからこれだけの広がりをみせている。
  • 温暖化のティッピングポイントを超える前に、一人ひとりが行動の輪を広げて、市民のティッピングポイントを超えよう。
  • CO2は公害であり、1.5℃は77億人の命の問題と捉えよう。一度、気候災害の被災地に足を運ぶことをお勧めする。現場を見ると驚くほど意識が変わるから。

ということで、怒涛の二日間、懐かしい面々との再会や新たなつながりもでき、社会の第一線で気候危機に立ち向かう人たちの話に触れて興奮を禁じ得ない自分がいる、ということはなく、明日からまた日常に戻り、多数派の人たちの無関心や再エネへの反発・無理解、再エネ導入や社会を変えることの難しさに向き合うことを考えると、この場とのギャップに何とも言語化しずらい感覚が湧いてくる。でも、以前と違っているのは、日常に戻ったときに共に歩んでくれる仲間たちがいること。共に気候危機に立ち向かおうとする仲間がたくさんいてくれること。