給湯の脱炭素化を考える(その3)

ステンレス製魔法瓶

冬も終わり、太陽光パネルの発電量も増えてきて、この電気を安く売るより化石燃料の消費を減らすために使いたい欲求も強まってきたので、エコキュートの見積もりを取ることに。

そこで発覚したのは、以下の点。

  • 思ったより高額(汗)。
  • 室外機(ヒートポンプユニット)は外に置かないといけない。→ 今は石油給湯器を土間に置いているので、同じでいけるかと思いましたが、だめらしい。裏磐梯の冬場の寒さを考えると凍結防止ヒーターの電力消費がすごいことになりそう。
  • 貯湯タンクのお湯は冷めないように日々加温するらしい。→ グリーンシーズンはなるべく晴れた日だけ稼働するように考えていたけど、そうもいかない? 

今は冬期でも使用時以外は給湯器の通電は切っていて、一日一回通電して水を循環させれば凍結しないのだけど、室外機が外にあるとそうはいかないし、そもそも通電状態を維持しないと貯湯タンクの温度も保たれないとなると、今までのやり方が通用しないわけで。

あとは、安い夜間電力が前提のところがあって、必要な時にだけお湯を沸かすのに比べるとエネルギー消費は大きく、状況が変わってお湯の使用量を節約したくなっても融通が利かないというところもちょっと後々後悔しそうな気がしなくもない(今の政府のエネルギー基本計画や世界情勢を見ているとエネルギーコスト高騰に対するレジリアンスは高くしておく必要がありそう)。

 

ということで、エコキュートの導入は一旦保留で、代替案として、晴れた日は電気でお湯を沸かし保温しておいて、それを夜にお風呂に使うことにしました(自分だけ)。具体的には十分な発電量があるときはティファール電気ケトルでお湯を沸かし、6リットル分を魔法瓶(1個3280円のピーコックのステンレス製魔法瓶2リットルを3つ購入)に入れておき、シャワーのときに給水タンクの水6リットルに熱湯をいれると約45℃のお湯が使えるようになる(お湯80℃、水道水10℃として)という感じ。

冬期は薪ストーブの排熱で沸かしたお湯で似たようなことをしていますが、足湯用の金盥に使うお湯が要らない分、グリーンシーズンはお湯が少なくて済みますね。

 

家族の分もどうするかは、今後の検討課題。

2021年のエネルギー収支

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2021年のエネルギー収支

上のグラフは2021年の我が家のエネルギー収支(光熱費収支)です。去年はこびっとハウスに設置した太陽光発電(売電単価21円)と6月に卒FITを迎えた母屋の太陽光発電(同42円、7月から10円)の両方のFITの売電益があったので、本年だけ売電収入が他の年より高くなっています(187,937円)

 

電気代も、リーフの充電はもっぱらこびっとハウスの太陽光発電で賄ったので、去年より削減できています(18,270円 → 15,144円)。今回グラフに追加した「充電」は、急速充電のコストで、駅の駅つちゆで500円/回有料で充電する機会が何回かあったのと、日産の充電認証カードの料金です(2,200円/月ですが、リーフ購入時のキャンペーンで1、2年目は無料、3、4年目は商品券48,000円分提供、だったので3年目の今年は消費税分の200円/月だけ計上してあります)。

 

5年目以降は充電認証カードの料金が重くのしかかってきますが、去年は軽トラの出番が少なかったので、ガソリン代は0円だったこともあり、年間の光熱費は56,875円と3年連続で過去最低を更新しました。収支は去年だけ特別高くて128,962円となりました。

 

ちなみに原油価格高騰のため、自治体から灯油購入費助成金5,000円が各世帯に給付されましたが、これは計上していません。

 

 

給湯の脱炭素化を考える(その2)

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「給湯の脱炭素化を考える」の続き、どんな製品やどんな電力会社、サービスメニューを選ぶべきか、を考えてみました。

太陽光発電+給湯となるとエコキュートが有力な選択肢ですが、以下が気になる点です。

  • 一番気になるのが、ヒートポンプは寒冷地では効率が下がる点。しかも、冬期は発電量も減るので、買電しないといけない
  • ヒートポンプは割安な夜間電力利用するので光熱費が低いという点。(東北電力には戻したくないし、今後、徐々に夜間の電気料金は値上がりする懸念もある)
  • 給湯タンクにお湯を貯める貯湯ユニットタイプと逐次お湯を沸かす給湯専用タイプ、どちらが良いのか?
  • エコキュートにすると余剰電力と使用電力を相殺する「Looopでんき0」というサービスはどうか。実質、20円以上(=購入電力単価)で発電した電気を買取るのと同等とのこと。その代わりに余剰電力の買取はない。
  • エコキュートは壊れやすいと言われているが...

壊れやすいのはしっかり保証をつけるとして、あとは年間電力料金をシミュレーションしないと判断できなそうなので、やってみました。貯湯ユニットタイプを現状の「Looopでんき」、「Looopでんき0」、深夜割引を利用、の3ケースと、給湯専用タイプを「Looopでんき」を利用、の1ケースをシミュレーションしてグラフ化したものが以下です。縦軸は年間電気料金、横軸は日ごとの給湯利用量(リットル)。

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以下の前提を置きました。
 給湯温度:43℃
 年間給湯保温効率:3.0
 電力単価:25円/kWh(深夜割引は「よりそう+ナイト8」で基本料金1,430円+単価11.12円、年間発電量は去年の値:2847kWh、売電単価10円/kWh)

給湯ユニットの前提
 沸き上がり温度:90℃
 焚き上げから使用までの温度低下:5℃(昼沸かして夜使う前提)

 

まとめ

  • 給湯専用は給湯タンク式に比べて使用量が少なければ差も少ないが、使用量が多いと格段に効率が悪い
  • 毎日の使用量が100リットルくらいなら、現状のループでんきが最安。300リットルならループでんきゼロ、500リットルなら夜間電力の電気代が最安。我が家はキッチンではお湯は使わず、シャワーで(あと冬場はたまに洗濯機も)使っているだけなので、使用量は100リットル以下と思われる(未計測)
  • 使用量100リットルで年間の電気代が7,600円くらいなので(本当か?)、現状の灯油給湯器と光熱費はほぼ同じくらい
  • 年間給湯効率が2.0,3.5,4.0のパターンでも、多少の違いはあるものの傾向は変わらず

あてが外れたら、サービスを切り替えれば良いかな。どんな製品を選ぶかはまた書きたいと思います。

Photo by photoB. 

給湯の脱炭素化を考える(その1)

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Photo by UK govornment Some rights reserved.

 

COP26が閉幕しました。この会議で「世界の気候変動対策の基準が、事実上『1.5℃』にシフトしたこと」*1 は重要ポイントですね。ただ、「シャルマ議長は檀上で『深くおわびする』と謝罪し、言葉を詰まらせながら涙した。」*2 という異例の事態は、議長が注力した石炭火力の「段階的廃止」が合意できず、「段階的削減」という表現に弱めらたから。先進国側の資金提供の約束が果たされなかったことへのインドなどからの反発が要因とも見られていて、気候変動をめぐる国際交渉の難しさを思います。

そうは言っても、脱炭素は避けられない現実で、今後も国も自治体も企業も個人もそれぞれが転換を急ぐ必要があるし、転換がうまくいけば今より幸せな未来にできる可能性があり、転換に遅れれば遅れるだけ、しっぺ返しが来る状況だと思っています。端的に言えば、光熱費や交通費などの日々の支出を低く抑えて他のことに支出を回せるか、価格高騰の煽りをもろに受け続けてじり貧になっていくのかの選択を迫られているとも言えると思います。*3 *4 *5

でも、脱炭素への転換には時間もお金もかかるので、長期の視点が必要。だからこそ、できるだけ早く転換に備える必要があります。そして、地域全体が転換するにもまずは誰かが実践して示さないと何も始まないのかも。そんな想いもあって、個人で粛々と脱炭素の取り組みを進めています。その上で弱い立場の人たちも一緒に転換するためにはどうしたらよいか、も重要な課題と思っています。

 

脱炭素への転換を考える時、以下の2点に着目すると整理がしやすいです。

  • まずは効率化などで消費を減らし、必要分は再生可能エネルギーに切り替える
  • 電気、交通、熱の3分野に分けて考える

 

我が家の現状や脱炭素の取り組み状況を以下にまとめました。★が化石燃料を使う(CO2を排出する)ものです。

  • 電気分野: 太陽光発電+再エネ100%の電力購入(Looopでんきのenecoを契約)、独立型太陽光発電(補助的)
  • 交通分野: リーフで自宅充電(たまに出かけた時に★急速充電)、★軽トラ(使用頻度少ない)
  • 熱分野(暖房): 薪ストーブ、★灯油ストーブ(使用頻度少ない)
  • 熱分野(給湯): ★灯油ボイラー、冬場は薪ストーブの排熱利用(補助的)、夏場はソーラークッカー(補助的)
  • 熱分野(調理): ★夏場はプロパンガス、冬場は薪ストーブクッキング、夏場はソーラークッカー(補助的)
  • その他: ★チェーンソー(使用頻度少ない)

 

ちなみに以下はエネルギー使用量の削減の取り組みです。

  • 電気分野: 節電、照明器具や冷蔵庫の買い替えなど
  • 交通分野: なるべく移動しないライフスタイル、近場は自転車で移動、エコドライブ
  • 熱分野(暖房): 断熱工事
  • 熱分野(給湯): お風呂以外ではなるべく給湯を使わない(排熱、ソーラークッカーなどを利用)
  • 熱分野(調理): なるべく弱火で調理、余熱調理、ローフードなど

 

10年かけて電気、交通、熱分野(暖房)の脱炭素がだいぶ進んだので、次は熱分野(給湯、調理)を考えています。調理は太陽光発電+IHという選択肢になかなか気が進まないので、まずは給湯から。

給湯の脱炭素化の選択肢として思いつくのはこんなところでしょうか。
・電化(再エネの電気で給湯)
太陽熱温水器
・薪ボイラー
・地中熱利用
・地域暖房/給湯

豪雪地帯の冬の日照時間を考えると、太陽熱温水器はつらい。日々の運用を考えると薪ボイラーもきびしい。地中熱利用は新築に限りますかね。地域暖房は個人ではできない。ということで消去法で電化を考えています。機器効率を考えるとヒートポンプ利用となるので、エコキュートが現実的な選択肢になってくるでしょうか。

あとは、我が家の石油給湯器が1999年製でそろそろ交換時期かな?というのと、冬期は雪で土間の出入口が困難になるし、最近は給湯器もかなり納期遅れが発生しているので、壊れてから交換というのはかなりリスキー。それと、今年卒FITして最近は日が差すとなるべく電気ケトルでお湯を沸かして保温ポットに入れるのが習慣化しつつあり、お風呂の給湯も太陽が生み出す電気をなるべく使いたい、という気持ちもあります。

では、どんな製品やどんな電力会社、サービスメニューを選ぶべきか、次回のブログ記事で書きたいと思います。


*1 COP26の成果と課題、現地入りしたNGOが解説|オルタナ
https://www.alterna.co.jp/42739/

*2 環境省の「COP26結果概要」に「石炭」の文言なし|オルタナ
https://www.alterna.co.jp/42826/

*3 石油ショック、再来の兆候…原油価格が在庫急減で高騰、シェールオイル枯渇の鉱区も|business journal
https://biz-journal.jp/2021/10/post_259458.html

*4 家庭を苦しめる原油高騰の裏側を分析|エナシフTV
https://www.youtube.com/watch?v=vS44DOu_ZaQ

*5 【経済の深層】安い日本 超円安時代|デモクラシータイムス
https://www.youtube.com/watch?v=5wdb57ZhgTY

 

卒FITまでの10年を振り返る

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2011年に太陽光パネルを設置して10年経過して卒FITを迎えたので、その振り返りをしておきます。

10年の総発電量は33,705kWh、一般家庭の約6.7年分(5,000kWh/年として)の電力を発電しました。自給率は417%だったので、自家消費の4倍の電力を地域に供給したことになります。
売電は42円での契約で、10年で1,274,550円売電しました。これは、助成金を差し引いたシステム価格1,411,000円の約9割に相当し、9割方元が取れたことになりますが、電力モニターによる節電効果を考えれば、投資額以上の経済効果があったと言えると思います(お金の話ですみません...)。
また、今後も安いながらも売電し続けて家計の足しになってくれます(須賀川ガスに10円で売電)。一方で太陽光パネルは長寿命と言われているものの、パワーコンディショナーは寿命10年~15年くらいとも言われているので、交換費用は見込んでおく必要がありそうです。

元々、豪雪地帯でも太陽光発電できることを実証したくて設置したので、その意味では10年間特に支障く運用できたことは大きな収穫でした。

以下、振り返りです。
・電力モニターで消費電力が見える化できたので大いに節電が進んだ
・気温が低い方が発電効率は高いので、寒冷地でも十分な発電が期待できる
・一方、積雪があると発電しないので、都度雪下ろしが必要で、大きな負担になる(自分は楽しんでやっていましたが)し、積雪対応の太陽光パネルが必要で割高になる
・雪下ろし不要とする場合の選択肢として、急傾斜の屋根に設置(そういう屋根は少ない)、壁面設置(発電効率が悪い、面積が取りづらい)、架台を立てて設置(暴風時の破損が心配)、融雪機能付き(電力消費増加)などが考えられるが、どれも一長一短ある


そして卒FITを間近に控えた去年、差し迫った気候危機の対策の一環として再エネを増やしたいこと、EV車のリーフを100%太陽のエネルギーで走らせたいこと(母屋の太陽電池では充電時の8割程度しか賄えない)、ほぼ投資額が回収できたことから、こびっとハウスにも太陽光パネルを載せました(4.6kW)。kW当たり単価でくらべると、587,302円(母屋)→310,913円(こびっとハウス)と10年で約半分に下がりました(2021年の相場は22万円/kW~33万円/kW、平均26~27万円/kWのようです)。売電も42円→21円とこちらも半分に(2021年度:19円、2022年度:17円)。10年で半値の日本は再エネの価格低下が諸外国より遅れていると言われているのですから、諸外国の再エネの価格低下がいかに凄まじいか(1/5とも)実感します。

化石燃料に頼らない移動手段が確保できたことが何よりうれしく、ドライブも心地よいものになりました。冬は商用電力頼みになってしまいますけどね(一応、こちらも非化石証書を組み合わせたサービスを利用しているで、再エネ100%ではあるのですが)

 

開拓地のおばあちゃんたちの持続可能な暮らし

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私の住む福島県裏磐梯1888年磐梯山の噴火後に、植林活動や自然の回復力により、300以上の湖沼群からなる自然豊かな美しい景観が形成され、1950年に国立公園に指定された土地です。同時に、噴火により荒れ果てた土地を入植した人々が苦労に苦労を重ねて開拓した土地でもあります。そうした開拓者精神を受け継ぐ地元の人たちの暮らしぶりには経済成長に頼らない生き方として参考になる部分がたくさんあります。

 

自活力の高さ

地元のおばあちゃんたちはとにかくたくさん野菜をつくります。たまに訪れると有り余るほどの野菜をいただきます。パーマカルチャーでいうところの「余剰物の分配」。自分だけでなく周囲の人たちをも豊かにしてくれます。季節になると散歩ついでに山菜を採るのが楽しみです。散歩帰りには両手に袋いっぱいの山菜を持っています。それらの一部は塩漬けされて冬の野菜が採れない時期の食料となります。

 

地域のつながり

おばあちゃんたちは免許証を持たない人も多く、日常の移動は徒歩か自転車です。余計な物は買わず、旅行にも行かず、ご近所さんとの「お茶っこ」が日課。コミュニケーションが密で困ったことがあればいつでも助け合える間柄です。地域外の人と会う機会が少ないので感染症の心配もほとんどありません。「お茶っこ」のお供には、手作りのお菓子や漬物、煮物などがほとんど。手作りのおかきやカリントウ、ポテトチップスなど、市販のものよりずっと美味しかったりします。

 

自然界への感謝

自然からたくさんの恵みをいただいて暮らしているからなのでしょうか、おばあちゃんたちの態度の端々から山々を敬う気持ちが感じられます。また、この地域では五穀豊穣を感謝する「秋祭り」、無病息災を願う「歳の神」の行事が集落ごとに行われ、神様への祈りを捧げます。また、近隣集落では「熊祭り」が行われ、ツキノワグマへの感謝が捧げられます。

 

まとめ

国立公園という大規模開発から守られ、生物多様性を維持する努力が続けられてきた自然豊かなこの土地での自然の恵みに感謝しながらの暮らしは、環境への負荷も少なく、ある意味最先端の暮らしという側面もあるように思います。コロナ禍にあって多くの人が都会から地方や農村、山間地などに移り住み、おばあちゃんの暮しぶりに学び、ライフスタイルを変えていくことで、社会全体の環境負荷もまた大きく低減されるのかも知れません。

 

Photo by Anju Nakamori All rights reserved.

エネルギー基本計画見直しの議論について

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1.エネルギー基本計画とは?

日本において、国民の多くが反対しているにも関わらず原子力発電所(以降原発)が再稼働され、年々気候変動の自然災害が拡大しているのに、石炭火力発電所が大量に新設され、再生可能エネルギー(以降再エネ)の普及が頭打ちになっている理由をご存じでしょうか? その大きな要因の一つがどのエネルギーをどれくらいの割合とするかを定めた「エネルギー基本計画」です。 

この計画では、2030年に再エネ22~24%、原発20~22%、石炭火力26%(いわゆるエネルギーミックス)を目指しているために上述のような状況になっており、再エネの拡大、原発ゼロ、石炭火力の早期全廃の実現には、この計画値の抜本的に見直しが必須です。 

また、日本の温室効果ガスの削減目標は2030年26%削減と、野心的な目標を掲げる国々に比べ極めて低い目標であり、国内外から大きな批判の的になっていますが、この目標値はエネルギーミックスを元に定められているため、エネルギー基本計画が削減目標見直しの大きな足かせとなっています。 

このエネルギー基本計画は、少なくとも3年ごとに見直しすることになっており、その議論が2020年10月より始まっています。

www.enecho.meti.go.jp

 

 2.見直し議論の課題

2020年10月26日に菅義偉首相が2050年までに脱炭素社会の実現を目指すことを表明したことで、脱炭素への移行を表明する企業が相次ぐなど、脱炭素を巡る産業界の状況は一変し、本分科会でも脱炭素社会の実現が主題となったことは歓迎すべきことと考えます。

 一方で、これまでも脱炭素社会への移行の必要性を訴えてきた環境NPOや専門家からは見直し議論の問題点も指摘されており、そのいくつかを紹介します。

 

(1)1.5℃目標を目指していない

なぜ2050年の脱炭素社会の実現が必要なのかの議論が見受けられません。地球の平均気温を産業革命以降1.5℃以下に抑えることがその目的ですが(1.5℃目標)、そのためには2030年に温室効果ガスの排出量を半減する必要があるということが国際社会で広く受け入れられています。本分科会ではパリ協定の1.5℃は努力目標という過去の状況が前提の議論となっているようで、あと10年で社会システム自体を大きく変革する必要があるとの視点、議論も今のところ見受けられません。これでは、1.5℃目標の達成に貢献できないだけでなく、取引先に再エネ100%を求めるグローバルな企業活動から日本企業が締め出されたり、輸出品に関税がかけられてしまうことも懸念されます。次回から2030年の議論が始まるので、内容を注視していきたいと思います。

 

(2)将来のイノベーションに依存

今回の議論では、火力発電で排出されるCO2を回収し、貯蔵したり、利用する技術(カーボンリサイクル)や水素、アンモニアが燃料の火力発電(ゼロエミッション火力)など、将来のイノベーションが大前提になっています。しかし、これらのイノベーションには経済合理性や技術的障壁、調達先の確保など今後解決しなければならない様々な課題を抱えており、実現性が不透明と言わざるを得ません。

 一方、欧州などでは風力発電太陽光発電などの天候に左右される電源(変動性再エネ)を大量導入するためのシステム改革や技術革新(セクターカップリング、電力システム改革など)について活発に議論され、取り組みも進んでいます。本分科会でも再エネを最大限導入するとしながらも、欧州に見られる変動性再エネ導入の議論が見受けられません。

 また、既存技術をいかに普及、拡大させるか、グリーンな経済へ移行に伴って生じる雇用の移動を円滑に行うための議論(公平な移行)も置き去りにされており、足元をしっかり固めた国民が安心して暮らせる社会にするための議論が望まれるところです。

 

(3)議論の体制

この日本の将来を左右する大切な議論を担うのは産業界や大学、研究機関から選ばれた24名の委員の方々ですが、脱炭素社会を担う柱であり政府が最大限導入を目指すべき再エネの専門家がほとんどいない、気候変動対策が不十分であればより多くの被害を受けることになる若い世代は委員におらず、60代、70代の委員が7割近くを占めるなど、委員の構成が偏っているとの指摘もあります。また、多くの委員が脱炭素社会の実現には原子力発電所の新設や更新が欠かせないと発言するなど、世論との意識に大きな乖離がある論点もあります。そもそも、すべての人々の将来に関わる重大なこの議論が一省庁と産業界寄りの委員のよって大きく方向づけられてしまうこの現状は大きな課題と言えるでしょう。

 

 3.私たちにできること

 1月27日よりエネ庁が国民の意見を受け付ける「意見箱」を設置しましたので、より多くの声を国政に届けて、あと4年が以下に重要であるかを認識していただきましょう。

www.enecho.meti.go.jp

 

また、日本でも自分たちの将来を憂う若者たちが声を上げ、素晴らしいキャンペーンを展開しています。署名も受け付けていますので、ぜひご協力をお願いします。 

ato4nen.com

 
Photo by websubs.