開拓地のおばあちゃんたちの持続可能な暮らし
私の住む福島県裏磐梯は1888年の磐梯山の噴火後に、植林活動や自然の回復力により、300以上の湖沼群からなる自然豊かな美しい景観が形成され、1950年に国立公園に指定された土地です。同時に、噴火により荒れ果てた土地を入植した人々が苦労に苦労を重ねて開拓した土地でもあります。そうした開拓者精神を受け継ぐ地元の人たちの暮らしぶりには経済成長に頼らない生き方として参考になる部分がたくさんあります。
自活力の高さ
地元のおばあちゃんたちはとにかくたくさん野菜をつくります。たまに訪れると有り余るほどの野菜をいただきます。パーマカルチャーでいうところの「余剰物の分配」。自分だけでなく周囲の人たちをも豊かにしてくれます。季節になると散歩ついでに山菜を採るのが楽しみです。散歩帰りには両手に袋いっぱいの山菜を持っています。それらの一部は塩漬けされて冬の野菜が採れない時期の食料となります。
地域のつながり
おばあちゃんたちは免許証を持たない人も多く、日常の移動は徒歩か自転車です。余計な物は買わず、旅行にも行かず、ご近所さんとの「お茶っこ」が日課。コミュニケーションが密で困ったことがあればいつでも助け合える間柄です。地域外の人と会う機会が少ないので感染症の心配もほとんどありません。「お茶っこ」のお供には、手作りのお菓子や漬物、煮物などがほとんど。手作りのおかきやカリントウ、ポテトチップスなど、市販のものよりずっと美味しかったりします。
自然界への感謝
自然からたくさんの恵みをいただいて暮らしているからなのでしょうか、おばあちゃんたちの態度の端々から山々を敬う気持ちが感じられます。また、この地域では五穀豊穣を感謝する「秋祭り」、無病息災を願う「歳の神」の行事が集落ごとに行われ、神様への祈りを捧げます。また、近隣集落では「熊祭り」が行われ、ツキノワグマへの感謝が捧げられます。
まとめ
国立公園という大規模開発から守られ、生物多様性を維持する努力が続けられてきた自然豊かなこの土地での自然の恵みに感謝しながらの暮らしは、環境への負荷も少なく、ある意味最先端の暮らしという側面もあるように思います。コロナ禍にあって多くの人が都会から地方や農村、山間地などに移り住み、おばあちゃんの暮しぶりに学び、ライフスタイルを変えていくことで、社会全体の環境負荷もまた大きく低減されるのかも知れません。
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