クライメイト・リアリティーのトレーニングに参加しました(その1)

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アル・ゴア氏が立ち上げたクライメート・リアリティー・プロジェクトのトレーニングに参加してきました。二日間のトレーニングは国内外から参加者約800人、約30人にも及ぶ豪華な講演者やパネリスト陣。初日は知識を身につけ、二日目は知識を行動に変える、をテーマでびっちり学んできました。

前日くらいから体調を崩し、情報量の多さに圧倒され、内容を書きとるのが精一杯で、自分なりに消化する余裕もないまま、初日は終了。自分なりのポイントは以下かな。

  • 世界では企業など多くの非国家主体が、1.5℃目標と整合する取り組みを進めることがトレンドになっている
  • その中でも金融の果たす役割は非常に大きく、国内の金融機関にも大きな変化が起きている
  • 世界では石炭火力からの撤退のトレンドは著しく、日本の新規石炭火力を止められるか否か、日本のCO2排出量を削減するうえで非常の重要
  • 気候変動対策は、単にエネルギー転換を目指すものではなく、SDGsとの整合をとりながら、あらゆる分野に及ぶ


以下、ほとんど覚え書きですが、初日の内容を紹介します。

グローバルな協力の現状

  • 考えられてきたよりも、気候の影響が大きく現れている
  • 今や多くのイニシアティブ(連合体?)が行動していて、1.5℃を目指すのがトレンドになっている
  • 金融界では、経済が地球の限界(プラネタリバウンダリ)を超えたという本質的な認識が広がっている。制度や生き方を変え、経済をサーキュラー(循環型)に移行するべき。
  • 官民協働でエネルギー効率の年3%向上を目指す"Three percent club"が成果を上げている
  • 気候変動の問題だけでなく、SDGsの17のゴール、169のターゲットはすべてつながっていて、すべて同じこと。
  • ネット・ゼロ・アライアンスのように、非国家主体もパリ協定と整合すべく、2020年の目標引き上げ、2050年ゼロを目指す動きが広がっている。
  • 気候行動サミットでは、科学には疑う余地はなく、ソリューションに焦点が当たっていた。食品ロスや牛など資源集約型農業など、食と土地利用で3割が解決できると言われている。食品ロスは温室効果ガス排出の8%を占めている
  • 昨日、食品ロスの法律が制定された。アプリを使って余った食材を把握してシェアするなど、新しいビジネスが広がっていて、チャンスと捉えるのが大切
  • バックキャスティングで脱炭素化を目指すべき。今できることの積み上げでは解決できない。イノベーションを体験し、解決策を広げること。IOTによるエネルギー効率化にも期待。
  • 10年で半減するには、制度の改革が必要。競争力に直結する企業も「2030年に50%」の転換を求めている。世界の電力分野の変革で再エネがコストダウンする中、石炭火力を国内外でどうするか、輸入燃料に頼らないためにはどうするのか?

    まとめ
  • 未来像はしんどくないものであるべき。みんなでチャンスを見つけよう
  • グレタさんのスピーチにあるように、我々の生活が将来の選択肢を狭めている。知ったものがつながること。RE100(企業が自社の消費エネルギーを再エネ100%にしようという運動)もつながるからこそ実現できる。
  • 気候変動には反対されても、SDGsには賛成してもらえる場合が多い。正面突破より側面から攻める手もある。目標を作りことで進む。知恵が集まる。


気候の危機とその解決策

 二時間半に渡るアル・ゴア氏の圧巻のプレゼンテーション。

 以下に詳細レポートがアップされていたので、内容は割愛。

www.sustainablebrands.jp

一点だけ。ゴア氏が指摘する国家の化石燃料への潤沢な補助金の現状を国民がしっかり認識して、そこに自分たちの血税を使わないようにと国に言い続けていく(または報道機関に伝えてもらう)のはとても大切かと思います。

石炭と気候の危機

  • 国内で30年前には電源構成比率が10%程度だった石炭は、安く安定的に入手可能であるため増え続け、現在は30%程度
  • 国内で計画された新規石炭火力発電所50件のうちキャンセルは13件、15件が建設中であり、これらは新規、既存含め石炭火力全体で7400万トンのCO2を排出することになる。実に1,500万世帯分に相当。
  • 妊婦さんは水銀を含む魚の摂取を制限されているが、それらの水銀は石炭火力発電由来であるとも言われており、大気汚染含め、国民の健康へ影響を与えていることがあまり知られていない
  • 国内では製造業が再エネの製造からも撤退する中、高効率火力の製造で産業や雇用を守りたいという向きもある
  • TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)で重視している、座礁資産などの「移行リスク」、台風などの「物理リスク」を踏まえ、国内でも新規石炭火力には投資しない大手金融機関も出てきている
  • CCS(CO2回収や貯留の技術)は欧米でも5年前には盛り上がっていたが、パリ協定発効後、再エネへ重点投資へとシフトし、今は下火。にもかかわらず、周回遅れの日本は今頃CCSが盛り上がり出している。
  • カーボンプライシングに向かうべきところが、国内では託送料金が石炭火力が有利で、再エネが不利になるように制度が変更になろうとしている。
  • ブルームバーグによれば、2024年には太陽光発電が5~6円になると言われていて、今でも7円のものが存在している。
  • Transition Finance(OECDが立ち上げた取り組み)などでは、(CO2排出の実効性が)ポジティブであるか、ネガティブでないかが重視されている。グリーンウォッシュやSDGsウォッシュには厳しい
  • 企業単体だけでなく、サプライチェーン含めて1.5℃目標達成を目指す動きが広がっている。リアリティーを見なければ競争力を失う
  • 市民が声を上げたことで撤退した石炭火力発電の計画がいくつもある。市民も影響を与えられるという意識が大切

クリーンエネルギーの未来

  • RE100により、再エネの需要があることが顕在化している
  • 再エネは無理だという人がいるが、Google「できるかできないか分からないから、俺たちがやる」と言っている。
  • 8兆円にも上る原油コストを、別なものに振り分ければ、たくさんのことができる。例えば地方再生に再エネを導入するとか
  • 自然電力は、原発約一機分1.4GWの電力を扱う地域のエネルギー会社。限界エネルギーはゼロ。
  • 地域の経済循環だけでなく、カルチャー・コミュニティー・インフラが大切。人が豊かに楽しく暮らせること。
  • 美しい町をつくれば、人は感性に惹かれてやってくる。エネルギーから先を考えたい。
  • 再エネは反対されない。国民負担を減らしながらいかに最大導入するか。コストダウン、送電、地域共生が鍵。
  • 今はコストが高い。連携コストはドイツの3倍。海外と協力してコストダウンしたい
  • Climate Dacade(気候の10年)の時代、エネルギー、食、衣料、建築、プラスチック、すべてが関わること。脱炭素化、サーキュラー・エコノミーがポイント

 二日目に続く。