クライメイト・リアリティーのトレーニングに参加しました(その2)

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レーニング二日目。前日得た知識を踏まえ、これからクライメイトリアリティーのリーダーとして行動に移していくために、仲間同士がつながり、自分の行動計画を立案し、今後の行動を自分に誓う時間。

といっても、疲れも溜まって集中力も途切れがち。それでも、会場の熱気と美味しいビーガン料理のおかげで体調も良くなったみたい。二日目は、具体的に気候変動に立ち向かっている際立った事例がいくつも紹介されて励まされた気分。こうしたトップランナーの動きを(一日目の学びによれば)体験し、それを広げていくことが大切なのでしょうね。

一日目の引き続き、覚え書き(しかもだんだん雑なメモに)です。

東京都の取り組み(小池知事)

  • 21世紀は大都市の時代。U20(Urban 20)で他都市と連携し、廃棄物や大気汚染、水の問題に取り組んでいる
  • キャップ&トレード(CO2排出量取引制度)の導入により、2000年に排出量がピークアウトし、2017年には23%削減を実現している
  • 都のGDPは増加傾向にあり、排出量とのデカップリング(経済成長とエネルギー消費の切り離し)に成功している
  • RE100の理念に基づき、今年の8月から都庁舎を再エネ100%の電力に切り替えている
  • ZEV(ゼロエミッションビークル:電気自動車、プラグインハイブリッド自動車燃料電池自動車)を2025年までに2倍にし、2030年までに5割を目指す。購入時に30万円を助成する。2030年までに急速充電設備を1000基
  • プラスティックごみの削減では、2030年までに焼却を4割削減し、総量を70万トンから40万トンに削減する
  • 適応策について、Tokyo Green Bonds が3年目を迎え、200億円となっている

変化をもたらす企業

  • 国内の危機感が希薄であり、世界の潮流に遅れている
  • 世界の潮流は、talk → walk → action → possitive impact up → negative impact down であり、いかに再エネを増やすか、いかに化石燃料を減らすかに焦点が移ってきている
  • 気候変動対策は、ネットゼロに向かう競争であり、ビジネスが起こした問題なのだから、ビジネスが解決するのだという意識が大切。金融が鍵となっている
  • ソニー:金融の動きがきっかけで、トップの意思により環境活動が活発になっている。ダイアログを重視している
  • パタゴニア:従業員の生活への配慮が大切。若い人が働きたい会社が良い人材を確保できる時代。顧客は消費者ではなく、社会を変えるパートナー
  • GPIF(日本の年金の積立金を運用管理する世界最大の機関投資家):年金の運用は100年持続可能であるべきで、長期的視点が重要だが今の金融界にはその視点が欠けている
  • 気候変動リスクは長期的に重要であり、そのコンセプトを訴え、アウェアネスを高める必要がある
  • 石炭への投資家には変化を促している。TCFDが推奨するシナリオ分析によりアウェアネスを高めてもらう。ムーブメントになりつつある。
  • JPモルガン:環境金融は長らくマイナーなものだったが、ESG投資の急拡大により180度の変化が起きている。
  • 気候行動サミット前日の国連会議では、パリ協定やSDGsと整合する金融について議論した

    まとめ
  • 個人が個人としてモノを言えない企業文化を打破しよう
  • 企業は気候変動イニシアティブへの参加を!
  • 「温暖化との戦いに負けるな!」「世界は目覚め始めている。あなたが好むか好まないかにかかわらず」 

会場からの質問への回答

Q) 懐疑派対策はどうすれば?
A) 国内でも多くの人は主流の考えを支持している。反原発の人たちの中には、原発推進の人たちが温暖化を利用したことから、温暖化に懐疑的な立場をとる人もいる。そこにあまり時間を取られるより、必要なことに集中した方が良いのかも。

Q) 高度経済成長期を牽引してきて、今は自分たちが気候変動の問題から取り残されていると感じている人たちを取り残さないためには?
A) 経済を発展させてくれたことへの感謝の念を忘れずに。彼らのせいではないのだから。再エネへの移行を共に。公平に移行しよう。
石炭、石油産業が電力販売に転換するなど、自由な市場が大切

Q) 原発の役割は?
A) 江守氏:運転時にはCO2を排出しないし、排熱も温暖化には寄与しないと考えるが、事故リスク、廃棄物、核拡散、作業員の人権などの問題をかかえており、しっかり議論する必要がある。100%再エネは可能と考える。小型原発の可能性は否定しない
ゴア氏:父は原発推進派で、自分も議員としてサポートしてきたが今は大きく失望している。それは莫大なコスト。建設費の増大、住民の反対、廃棄物の地下貯蔵。第三世代の原発はより高コストで、誰もそのコストも建設期間も答えられない。第四世代は小型で安価ではあるがそもそも存在していない。専門家によれば15年以内に成功するかは分からない

Q) 嫌われないように伝えるには?
A) 個人の選択の問題であり、変化は政策や法律、補助金の出し先などに求めよう
関心のない人にはREDD+の例のように途上国の参加を促す(温暖化対策が経済的にもメリットになる仕組みの提供ということ?)
若い人たちが声を上げることのインパクトは大きい。
日本文化では他の人と違うことがしづらい。自信ある幸せそうな笑顔がリーダーシップになることも。
LGBT同様に何が正義なのかは時代と共に変化する

Q) 日本では誰を説得すべき?
A) 私たちは選挙で誰を選ぶのか? 気候セキュリティーの議論が少なすぎる。社会不安や家を失う人などの社会的側面について、日本の研究者も及び腰になっている。
消費や投資で選択し、選挙の争点となるように、政界や財界により強いプレッシャーを。
Fridays for Futureが東京都へ気候非常事態宣言の請願書を出したように。

Q) 脱炭素はどうしたら?
A) 永久の経済成長はできない。4つの政策が大切(非エネルギー、脱炭素、エネルギー削減など)。シェアリング・エコノミーなら生産や排出量を減らせるし、人同士がつながれる。SDGsはつながりを見つけることでもある
消費を刺激し、必要以上の消費を喚起するような資本主義の側面は見直す時期に来ている。消費イコール幸せではないのに、値の付かないモノの価値を測れないGDPという歪んだ指標を使っているので、見る目が歪んでいる。本当に大切なものを図るべき。GDPには、汚染などのネガティブな外因性、メンタルヘルスなどポジティブな外因性、天然資源の枯渇、富の偏在などは含まれていない。

イケアジャパンの取り組み

  • 2025年に電力の再エネ100%、2030年に熱分野の再エネ100%を目指している
  • 地球の限界内で行動する。パリ協定や貧困対策を重視し、顧客や従業員の満足を大切にする
  • 物流センターなどはBREEAM認証(イギリス建築研究所建築物性能評価制度)を取得しビジネスメリットにもなっている
  • 2025年に100%ゼロエミEV化、無料の充電設備を配備
  • もったいない精神で大量消費から循環への転換を目指し、2030年までにすべての製品をリサイクル可能としバージンマテリアルの使用を抑える。プラスチックも全廃する。中古家具のリメイクをビジネスにする。テーブルウェアはトウモロコシを原料とし、食料も美味しいベジでフットプリントを1/7に減らす
  • 意図が言葉に力を与える。行動は家庭から。気がつけば知らないうちにあなたも環境保護レンジャー

コミュニティー・オーガナイジング

  • 気候問題は人を怖がらせもするが、「変えよう!」という気持ちになってもらうこともできる。聴き手との信頼関係づくりのスキルを学びました
  • 人々が共通の目標を達成できるためのリーダーシップ
  • 「ストーリーづくり」、「関係性づくり」、「チームづくり」、「戦略づくり」そして「行動」の5段階で考える
  • 戦略と同時に心で納得してもらうこと、ナラティブが大切
  • 「今のストーリー」:緊急性の理由、「私のストーリー」:自分が何故関わるのか、「私たちのストーリー」:その場の想い、共に経験したもの、を伝える
  • 感情を経験しないと人は動かない。私のストーリー、想いのきっかけ、痛みと希望、何が大切かの再認識
  • ワーク:「気候問題に取り組むあなたを突き動かす原動力」の自分のストーリーを3分で語り、聴き手からフィードバックをもらう

プレゼンテーションをマスターする

  • 数々のプレゼンを重ねてきた先輩からゴア氏のプレゼン資料の活用方法、プレゼンのコツなどを伝授いただきました

次のステップ

  • クライメイト・リアリティーのリーダーとして、クライメイト・リアリティーのネットワークとつながってこれからどんな活動ができるのかのご説明。
  • 毎年行われている"24 Hours of Reality"、今年は11/20-21に開催予定。このタイミングで周囲にプレゼンする機会をつくりましょう。
    (※ ウェブで24時間中継があるので、ぜひ見ましょう。去年の日本のパートはこのトレーニングでも司会された小松氏がナビゲート役で、環境への取り組みに熱心なローラさんも頑張ってました。)

ネットワーキング・分科会セッション

  • 企業やNGO、学生など5つの分科会に分かれてネットワーキングしました

気候行動のためのチェンジエージェント

  • 日本の平均のゴミのリサイクル率は20%だが、上勝町は80%。そもそもゴミがでないように努力している。
  • 秘訣を聞かれるが魔法の杖はない。30年の積み重ねと戦略性の結果。1:8:1または2:6:2を理解する。推進と反対の両極のいるのはわずかな人で、中間の多数派はより意識の高い方、より良いシステムの方、他の人がやっている方に流れる。
  • プラごみを減らすコツ:お店でストローを断る時に、「ストロー要りません」とはっきり伝える。これを何人もがやると店員は断られるという嫌な体験を嫌って「ストロー要りますか?」と聞くようになる。それで当たり前と思っていた人にも意識の変化が生まれる。友達と一緒の時にも目の前ではっきり断ると友達にも広がるかも。
  • グレタさんのスピーチの本質は「普遍性」。だからこれだけの広がりをみせている。
  • 温暖化のティッピングポイントを超える前に、一人ひとりが行動の輪を広げて、市民のティッピングポイントを超えよう。
  • CO2は公害であり、1.5℃は77億人の命の問題と捉えよう。一度、気候災害の被災地に足を運ぶことをお勧めする。現場を見ると驚くほど意識が変わるから。

ということで、怒涛の二日間、懐かしい面々との再会や新たなつながりもでき、社会の第一線で気候危機に立ち向かう人たちの話に触れて興奮を禁じ得ない自分がいる、ということはなく、明日からまた日常に戻り、多数派の人たちの無関心や再エネへの反発・無理解、再エネ導入や社会を変えることの難しさに向き合うことを考えると、この場とのギャップに何とも言語化しずらい感覚が湧いてくる。でも、以前と違っているのは、日常に戻ったときに共に歩んでくれる仲間たちがいること。共に気候危機に立ち向かおうとする仲間がたくさんいてくれること。