今、日々子供たちが放射能に晒され健康障害が危惧されている福島県の中通りでは、子供たちを助けたいという一心で疎開や除染に取り組む人たちと、放射能は安全だから心配し過ぎだと考える人たちの間で分断が起き、コミュニティーや家族の間に大きな亀裂が生じています。
その大きな原因の一つは、放射能リスクに対する認識のギャップ。放射能は低レベルでも危険だとされる情報がネット上に溢れている一方で、福島県が招聘した放射線健康リスク管理アドバイザーと言われる人たちが原発事故当初から行政やマスメディアのチャンネルを通じて今の放射能汚染は問題ないレベルであり、安全だと流布してきたことにあると思います。
そんなアドバイザーの一人、山下俊一氏が先日県内の医師向けの講演会を行った内容を紹介していただきましたので、修正せずにそのまま転載します。みなさんはこの内容をご覧になってどのように感じますか?
これまでの市民の講演会と全く異なり厳しい事実も含め語られていました。
内部被曝を無視したり不勉強という事はなく、よく研究されています。
さすが専門分野といった印象を受けました。
内容を端的に。
・長崎の被爆者追跡データ:年余を追うごとに過剰発癌、多重癌発生率の上昇がみられ50年たった今でも上昇をつづけている。一度、幹細胞のDNAについた被曝の刻印は一生消えない事実がある。
・チェルノブイリで活動した。現地で見られた小児甲状腺癌は成人の従来のものと全く異なりDNA損傷パターンがすべて同じであった。従来の甲状腺癌と異なり活動的で癒着が強く手術しづらい。ただしI131のアイソトープ治療によく反応した。
・ロシアは慢性的なヨード欠乏地域であったためI131の内部被爆の効果が厳しく出た。
日本ではヨードが十分に普段からとられていることが予想されるためチェルノブイリほど
の被害は出ないことを予想している。
・空間線量から計算した内部被曝の計算方法がある。地図を提示。
それによると3/12から3/24にかけて24時間、乳児が屋外にい続けた計算では飯舘村、川俣の一部はその期間だけで100mSvの積算内部被曝量の範囲にはいっていた。
20km圏外にある最強のホットスポットでは24時間屋外にいつづけた積算内部被曝計算で500mSv見込まれる場所がある。100mSv以下の範囲地図は提示されず。
・母乳からヨウ素が検出されたが微量なので乳児には問題ない。ただしそこから母体の
被曝量を逆算できる。それによると母体は数mSV程度のI131内部被曝と見込まれる。
食事からと考えられると。
・今回は汚染された食材の流通に即座に規制がかけられたので被害はでにくいと思われる。
・100mSV以下が安全との保証は全くなくグレーゾーン。そこにどう線引きするかは行政の仕事。水面下で活発に議論されており20mSv規制は、お母さんたちの運動の強さ如何では変わりそうな雰囲気である。
ヨーロッパでは学術的に十分説得力のあるデータをとれていない。
福島県医大を中心に住民の健康追跡調査を頑張りたい。最初の10日間が大事で3月で大部分の被爆量が決まってしまっている。
今後は最初の10日間、個人がどのような行動をとったかの聞き取り調査とセットで健康追跡調査をしていく準備をしている。いわゆるコホート研究がなされるべき。
今回、チェルノブイリでの活動以来、予想だにしない展開で自分の経験と研究が生かせると意欲に満ち溢れているようです。
などなど、思い出したらまた書きます。
※
住民を安心させたいという思いから、若干ぼかした表現で説明していたせいで誤解されてしまったとことがあるかもしれません。最初から住民にもこのように説明していれば信頼をえられたかと思います。